購入したばかりのテンマクデザイン ウッドストーブサイドヴューMを使っていて起きてしまった「逆流」。
一瞬のうちにテント内が煙でつつまれ、その煙が目にしみて痛いのなんのって。もう涙がとまりません。
今回の記事ではこの薪ストーブの逆流の状況と、対策について考えたことをまとめてみました。
冬キャンプでこれから薪ストーブを入れて使いたいと思っている方、また同じ現象で悩まれている方のご参考に少しでもなればと思います。
これは粕川オートキャンプ場でソロキャンプをした時に起きたものです。当日のソロキャンプの状況はこちらの記事に詳しく書いていますので、ご参考まで。
目次
サーカスTCに薪ストーブを設置して起きた悲劇を振り返る
この時、テンマクデザインのサーカスTCの中に薪ストーブを入れていたのですが、サーカスTCはダブルファスナーが採用されていて、煙突を幕から外に出すために加工が不要なので使い勝手がとてもいい幕です。
サーカスTCに関する参考記事はこちらをどうぞ。
それではまず、この時の逆流の状況から説明します。
薪ストーブの逆流というのは、通常は薪ストーブから煙突の出口に向かって流れる風の流れ方向が逆になり、煙突の外部から薪ストーブへと風が流れてしまうことです。
逆流は突然発生するのですが、この瞬間、薪ストーブが一気に鎮火し煙が大量に発生します。この煙は当然ながらテント内に充満するので困ったことになります。
この煙を消す方法について選択肢は2つ。
- 再び薪に火をつける
火が消えると上昇気流が無くなりますから、煙をふたたび煙突から外に出すには薪に再度着火するしかありません。 - 完全に火を消す
ダンパーを完全に閉じて完全に消火する。つまり薪ストーブを使うのをやめるということ。
ここから、薪ストーブとの熱い闘いがはじまります。
①.再び薪に火をつけることを繰り返しました。
点火→燃焼→逆流→煙大量発生→涙→点火→燃焼→逆流→煙大量発生→涙→点火→燃焼→逆流→煙大量発生→涙・・・
おそらく、十回くらい繰り返したと思います。
最後は。
「もうダメじゃ~。」
となったので、➁の完全に火を消すことにしました。
これ、すっごい敗北感です。
薪ストーブの火が燃える原理
ここで、薪ストーブの原理についておさらいしてみましょう。
薪ストーブを購入するときに、つい目がいってしまいがちなのはストーブ本体だと思いますが、実は薪ストーブで火を燃やす時に大切な働きをしているのは煙突なのです。
薪ストーブを暖めると「上昇気流」が発生しますが、この上昇気流はドラフトと呼ばれています。
ドラフトの力が強ければ強いほど逆流が起きにくいということになるのですが、このドラフトの力は
- 煙突の入り口と出口の気圧の差
⇒煙突が長いほど強くなる - 空気の熱膨張により生じる浮力
⇒燃焼ガスが高温であるほど強くなる
で決まります。
テンマクデザインのウッドストーブの実力は?
住宅で使われているような薪ストーブは煙突高さが4m以上あるような大きさですが、それに比べるとキャンプ用の薪ストーブはかなり小型になります。
それゆえドラフトの力は小さく、逆流が起きやすいのは仕方のないところかもしれません。
僕が購入したテンマクデザインのウッドストーブサイドヴューMの実力はどれくらいなのでしょう。
煙突内の上昇流は煙突内外の圧力差ΔPによって生まれますが、これは先ほどの煙突の長さ、煙突内の温度より次の式で計算できます。
ΔP=C*h*(1/T1-1/T2)
ウッドストーブのS・M・Lの3つのサイズをこの式にあてはめて計算してみると。
単位 | Sサイズ | Mサイズ | Lサイズ | ||
ΔP | 煙突内外圧力差 | Pa | 5.9 | 7.1 | 8.0 |
C | 定数 | kg・K/ms2 | 3463 | 3463 | 3463 |
h | 煙突高さ | m | 1.25 | 1.5 | 1.7 |
T1 | 外気温度 | K | 288 | 288 | 288 |
T2 | 煙突内平均温度 | K | 473 | 473 | 473 |
※煙突高さは、カタログより直管単品の長さから直径分をラップ代として引いて5倍(5本部)して概略計算しています。スパークアレスタ単品長さは加えていませんので、実際はもう少し長いかもしれません。
※温度の単位は絶対温度(K)外気温度:15℃、煙突内平均温度:200℃と仮定
差圧で見ると大気圧がおよそ10万Pa(パスカル)なので、5Paから8Paというとかなり小さい値ですね。
仮定値ばかりですが、MサイズとLサイズの差圧の違いは意外となくて1割くらい。
圧力差は煙突の高さと比例するので、直管の煙突を1本追加するとLサイズと同じくらいの差圧が得られることからサイズによってそんなに大きな差はなさそうです。
また煙突がしっかり暖まるまで(T2が小さい)は、煙突内外圧力差が小さいので逆流が起きやすいですね。
僕が使っているテンマクデザインのウッドストーブサイドヴューMの紹介記事はこちらです。
キャンプで逆流が起きた時の状況
当日は、サーカスTCにウッドストーブを入れていたのですが、レイアウトは下の図のようになっていました。サーカスTCは2面を開口できるのですが、下流側の開口も閉めてはいたのですが、スカートが強風時にバタバタと煽られていました。
幕内では、ストーブを置いた方向から強い風が吹いてきていたことになります。下の写真の後ろ側に見える幕が内側に膨れているのがその証拠です。
この配置だと煙突から火の粉が飛ぶとテントにダメージが生じる恐れがあるので、あまり好ましくはないですね。
薪ストーブの逆流対策について考える
それでは、ここから逆流を防ぐ対策を考えてたいと思います。どれだけやれば改善できるかは実際にやってみないと分からないので、とにかく思いつくことをあげておき次回の薪ストーブ使用時に出来ることから試してみようと思います。
これからお話する内容は、僕がツイッターにこの時の「逆流」の状況をツイートしたことに対して、数人のキャンパーさんからいただいたアドバイスを参考に書かせてもらってます。
煙突の長さをのばす
煙突の長さはドラフトと大きな関係があることが先ほどの計算からも分かりました。なので、この煙突の長さをのばすという対策は一番効果があるはずですし、はじめに着目すべきポイントだと思っています。
それにウッドストーブサイドヴューMの煙突はサーカスTCに比べて少し短い気がしていたので、一石二鳥です。
つまり煙突を延長することでテントに風が当たって生じる風の乱れの影響を受けにくいはずですし、煙突の先端から火の粉が出たとしてもテントを焦がしにくいという副次的な効果も見込めるのです。
サーカスTCの高さは280cm。一方、テンマクデザイン ウッドストーブサイドヴューMの高さは240cmなので、直管を2本継ぎ足してやるとテントの高さよりも高くすることが出来ますね。
2本継ぎ足した時の煙突内外の圧力差ΔPは次のようになります。
記号 | 意味 | 単位 | Mサイズ | ’プラス直管2本 | Lサイズ |
ΔP | 煙突内外圧力差 | Pa | 7.1 | 9.9 | 8.0 |
C | 定数 | kg・K/ms2 | 3463 | 3463 | 3463 |
h | 煙突高さ | m | 1.5 | 2.1 | 1.7 |
T1 | 外気温度 | K | 288 | 288 | 288 |
T2 | 煙突内平均温度 | K | 473 | 473 | 473 |
直管を2本継ぎ足せば、LサイズよりもΔPが高くなる計算です。
煙突の延長作戦は、みーこパパ@ファミリーキャンピングさんからもご意見をいただきました。
みーこぱぱさんは薪ストーブのノウハウをブログにまとめられていて、これも参考になりました。
以下に記事へのリンクをはっておきます。
二重煙突を使う
”薪ストーブ 逆流”のキーワードで検索すると、二重煙突のことが書かれている記事がたくさん見つかります。二重煙突は主に住宅用の薪ストーブで使用されているものですが、煙突を断熱構造にすることにより煙突内部温度が下がらないようにしてドラフトを上げる工夫です。
ウッドストーブのオプションにもこの2重煙突があります。ただしこれはテント貫通部に使うためのパーツのようで、テントを熱から守る意味も兼ねている様です。
オプションの2重煙突は長さが非常に短いので逆流に対してどれほど効果があるかは分かりませんが、使った方がいいのは間違いないでしょう。
画像はテンマクデザインHPより引用
ただし僕は現在、テント貫通部にオプションのプロテクターを購入して使っているので今からの採用は金銭的に難しいです。もしプロテクターを持っていなかったら二重煙突の方を購入したと思います。ということで、今回はこの2重煙突については見送りにしようと思います。
二重煙突をつける目的は煙突内部の温度低下を防ぎドラフトを維持することですが、ワンポールテントならば同じ目的のために考えるべき別の方法があります。それを次にお話します。
ワンポールテント内への薪ストーブの配置
寒い季節になると、暖房の効いたテント内とテント外の温度差が大きくなってくるはずです。そんな時サーカスTCのようなワンポールテントの場合なら、出来るだけテントの中央部に薪ストーブを置いた方が屋外に出る煙突の長さが短くなるため、煙突内部の温度が下がりにくくなると考えられます。
下の図で説明すると、テント外の煙突長さが長い①よりもテント外の煙突長さの短い➁の配置のほうがドラフトが上がるということです。テント内のレイアウトさえ許せば、こんなことを考えながら薪ストーブを配置すると良いと思います。
強風で幕内が負圧になっている
逆流についていろいろと調べているうちに、テントの外を流れる速い風によりテント内部が負圧になっているのではないか?という疑いをもつようになりました。
これは逆流が起きた時にテントの風上側は内側に幕が膨れていて風の吹き込みが感じられなかったこと、それと同時にテント下流側はスカートがバタバタしていたからです。
つまりテント外周を流れる風によって、テント内の空気が引っ張られる現象が起きているのではないかと。煙突効果で発生する圧力差がとても小さいので、このような現象でも影響がでてしまうという可能性を考えています。
ただ、この対策としてできることはテントのペグダウン位置を調整してテントをピンと綺麗に張るぐらいかなと思っています。
サーカスTCをお使いの方ならわかると思うのですが、設営ガイド(5角形の布)でペグの位置を決めても、テント本体を立てるとペグ位置がズレていると感じることが良くあるのです。だから幕にたるみが出来ないようにペグの最終調整を十分行うのが対策です。
風圧帯を避ける
この風圧帯というのは強風が屋根や壁にぶつかった時に出来る気圧の高いエリアのことです。
家用の薪ストーブの場合は逆流対策として風圧帯を避けた位置に煙突を取り付けるのがセオリーとなっているようで、この「風圧帯」は重要キーワードです。
これが柔らかいテントに風が当たった場合にも当てはまるかどうかは分かりませんが、当日はテント内の風上側から煙突を出していたことが少し気になります。風の向きが予想できれば、テントにぶつかった風の影響を受けにくくするため、テント風下側から煙突を出すレイアウトにした方が良いと思いました。
それから煙突にオプションの直管をつけたして、テントから離すことも効果がありそうです。
逆流防止煙突トップ
逆流を防止するために、煙突の出口の形状を工夫したものが世の中にはあるようです。おもに煙突先端から風が入るのを防ぐ目的で設計されているようですが、残念ながらウッドストーブに似た様なオプション品はありません。
ところがこれには朗報があって、同じウッドストーブを使っている先人者(くにぱぐ@燻製&自作ラーメンキャンパーさん)からツイッターで面白いノウハウを教えていただきました。
これは、煙突先端部近くにオプションの45度エルボを入れるというもの。まずは下の図をご参照ください。
煙突出口(フレームアレスタの下あたり)に45度エルボを入れ出口を風下側に向けてやるという作戦です。煙突先端の向きについては煙突の根元をクルクル回すことによって調整出来ます。
確かにこうすれば、強風下でも煙突先端から燃焼ガスが抜けやすくなることが想像できますし、実際に教えていただいたくにぱぐさん曰く、とても効果がある方法だそうです。これぞノウハウですね。
実績も既にあるので、この「くにぱぐ作戦」は試す価値がありそうです。
ユーロストーブのドラクリボウル
isamu.99さんから情報をいただきましたので、キャンプ用の薪ストーブでも使えそうな逆流防止装置をご参考に載せておきます。
ユーロストーブ(EUROSTOVE)のドラクリボウルという商品です。
まとめ
以上、逆流対策のアイデアをまとめてみました。これからキャンプで試していこうと思います。
今回はまずグーグルで薪ストーブの逆流対策について調べてみましたが、キャンプのテントにおける薪ストーブの逆流という記事はほとんど見つかりませんでした。やはり薪ストーブといえば住宅が主流ですから、これは仕方がないところかもしれません。
そこでツイッターに書き込んだところ、いろいろとご意見をいただくことが出来ました。その結果、なんとか光が見えてきたので教えていただいたみなさんに感謝しています。
さて、この記事を書いた後でウッドストーブの直管と45度エルボをさっそく手配し追加してウッドストーブを使用していますが、その後は逆流を起こしたことはありません。
最後にひとつだけ書いておきたいことがあります。
今回は薪ストーブの逆流対策について考えたことをまとめたのですが、いくら対策とはいっても人が考えることですから、どこかで自然には負けてしまう限界点があると僕は思っています。
だからもしこれらの対策が上手くいったとしても、こればかりは過信は禁物なのです。
寝てしばらくに間は暖房を持続させようと、就寝前に薪ストーブのダンパーを絞って燃焼を遅くした状態のままにしている方も実際にはいらっしゃるのではと思うのですが、そんな意識のない状況下で今回のような逆流が起きたとしたら、最悪は悲しい結末となってしまうことにもつながりかねません。そんなことを今回の経験から想像したのですよね。
いつ風が強くなるかもしれない、風向きも変わるかもしれない、何も先が読めない相手が自然なのですから。
それでは今回はこのへんで。
みなさん、楽しいキャンプを!