今回は、今年発売されてからしばらく使っているSOTOのFUSION(フュージョン)ST-330についてご紹介します。
このST-330は2019年の4月10日に発売されたばかりの新しいCB缶用シングルガスバーナーです。ST-330はバーナー部分とガスボンベがガスホースを介すことで離れているのが特徴で。「分離式バーナー」と呼ばれています。
僕は今年2月にAmazonで予約していたので4/21に入手しました。それまで同社のST-310をずっと使用していたのですが、それからずっとこのバーナーを使っていますので、ST-310との違いや使って分かったことを紹介していこうと思います。
このST-330フュージョンは、これまでのSOTOのシングルガスバーナーの特長を融合(フュージョン)させて作られたバーナーだけあって、性能については期待できる製品です。
実はST-330のこのコンセプトを知った時、僕はあの石ノ森章太郎先生のサイボーグ009を連想し内心ワクワクしてしまいました。
というのも作品中で一番身体能力が高い009は、他の00ナンバーのサイボーグ技術を結集して作られた最高傑作なのですが、このST-330の生い立ちが009に似ていることから、サイボーグ009に匹敵する強さになっているのではないかと思ったからです。
でも、そんな009にも弱点はあるわけだし。。。
というわけで、このST-330は本当にシングルバーナー界で最強の戦士なのか? さっそくみていきましょう。
SOTO ST-330フュージョンの仕様を比較
まずFUSION(フュージョン)と呼ばれる理由を理解するために、同社の代表的なシングルバーナーとST-330を比較してみます。
ST-330 | ST-310 | ST-301 | SOD-372 | |
使用時寸法(mm) | 幅410×奥行120×高さ90 | 幅166X奥行142X高さ110 | 幅190×奥行176×高さ83 | 幅150X奥行130X高さ90 |
収納時寸法 | 幅110×奥行75×高さ90 | 幅140X奥行70X高さ110 | 幅160×奥行100×高さ90 | 幅65X奥行65X高さ90 |
重量 | 250g | 350g | 690g | 225g |
発熱量 | 2.6kW | 2.9kW | 3.7kW | 3.5kW |
使用時間 | 約1.5hr | 約1.5hr | 約1.4hr | ※1 |
五徳径(mm) | 165 | 130 | 200 | 170 |
五徳の足 | 4本 | 4本 | 3本 | 3本 |
使用可能鍋サイズ | ※2 | 直径19cm | 直径25cm | 記載なし |
燃料 | CB缶 | CB缶 | CB缶 | OD缶/ガソリン |
すり鉢ヘッド | 〇 | × | × | 〇 |
マイクロレギュレーター | 〇 | 〇 | × | × |
形式 | 分離式 | 一体式 | 分離式 | 分離式 |
※1:0.8時間(SOD-725Tを使用時)
※2:ST-330の取説には使用可能な鍋サイズについては明記がありませんが、「こんろから極端にはみでるような大きな鍋や大きな鉄板など」とボンベの過熱に対する警告の記載があります。また「使用時は容器(ボンベ)の過熱を防ぐためバーナーと容器(ボンベ)を必ず15cm以上離して使用してください。」との記載もあります。
軽量コンパクトになった本体
分離式になると大きく重くなりそうなところですが、意外にもCB缶一体式のST-310と比べST-330は収納時寸法が小さく、かつ軽量です。積載能力の高いオートキャンパーにとってはあまり恩恵を受けるポイントではないかもしれませんが、道具一式をザックに詰めて背負ったり、自転車やバイク乗りのように積載できる荷物の量が限られる場合にはありがたいと言えます。
分離式バーナーであることの利点
ST-310とST-330の一番わかりやすい違いは、ST-310が一体式バーナーでST-330が分離式バーナーであることです。この差をみていきましょう。
大きな鍋を載せてもボンベが加熱されないので安心
ST-310は直径19cmの鍋までしか載せることが出来ないため、デュオキャンプくらいなら容量的に問題はないのですが、それ以上の人数でキャンプをすると使い道が限られてしまいます。
一方、分離式のST-330ならば、ST-310のように五徳に載せた鍋やフライパンからの輻射熱でボンベが加熱されることが無いので、もっと大きな鍋でも使用できます。
100均のバットに五徳がスッキリと収まる
シングルバーナーを置くテーブルが耐熱性のある場合でも、炊飯などする時は炊飯鍋から汁が垂れて下に落ち汚れますので、100均で売っているようなバット(トレー)の上に五徳を置いて炊飯作業をしたいところですよね。
こういう時、一体型バーナーのST-310だとバットのフチの立ち上がり部にCB缶がのっかってしまいバランスが不安定になりますし、ボンベホルダー(CB缶の接続部)に荷重負荷がかかってしまうので、あまり好ましい使い方とは言えません。
その点、分離式バーナーのST-330ならばバット内に五徳の部分だけがすっぽり納まりますので、そんな問題は無いですね。
使用中にガスが無くなってもボンベ交換しやすい
ST-310の場合、料理中にCB缶が空になった時の交換が結構大変な作業です。というのはガスボンベを外したり、取り付ける作業をする際は、どうしても熱くなっているバーナーの脚の部分を持つ必要があるからです。
一方、分離式のST-330ならボンベホルダーが熱源から離れているため、手で触っても熱い部分がありません。これなら交換も楽だし、安全ですね。
ST-330に見た進化のポイント
その他にもSOTO ST-330には進化ポイントがたくさんあります。じっくりとみていきましょう。
すり鉢バーナヘッドは風に強い
SOD-372(ストームブレイカー)のカタログには優れた耐風性と書かれていますが、鉢ばち状のバーナヘッドを引き継いだST-330フュージョンも風に強いのでしょうか。すり鉢の部分を見ると、火口がヘッドの端部より低いので、確かに火口から出る炎に風が当たらず(上をすり抜ける)、炎が吹き飛ばされて消えることは無さそうです。
そこで、風の強い日にキャンプをしたとき、炎がどうなるのか観察しました。考えれば当たり前ですが風が吹けば炎は風に流されます。
だけどこの時、火口から出る火は根元から消されてることなく燃焼を続けていましたので、耐風性能が高いことにウソはないようです。
さて、ちょうど購入してから一年くらいST-330を使っていますが、このすり鉢バーナヘッドの防風性能(風に吹かれて消えない)は、かなり優秀だと感じます。
手元に移った点火スイッチはGood
点火スイッチはCB缶側に移ったことは、ST-310を使っていたユーザーにとって嬉しい改良点です。
もう火傷の心配をしながら、恐る恐るスイッチまで指をのばして点火する必要はありません。ST-310にはあった別売りの点火アシストレバーも、ST-330ではもちろん不要です。
ST-330の五徳の安定性
僕がST-330フュージョンとST-310(一体型)を比べた時に、ST-330の方がかなり良いと感じるのがこの五徳です。
次に僕がST-310を使っている時に不満と感じていた五徳の安定性についてみていきましょう。
仕様ではST-330はST-310より五徳径が大きく、五徳高さが低くなっていることから安定性が改善されているようです。さらに五徳を支えている脚の数はST-310と同じ4本のままです。
この仕様から、五徳の安定性向上に関しては製品化するときにかなり検討されたポイントだと感じられますが実際はどうでしょう?
そこで、いろいろな調理器具を載せて調理してきた結果を振り返ってみたいと思います。
最初に下の写真はST-310を使っているところです。あとで出てくるST-330の写真と比べると五徳の高さが高く、安定感に劣る感じがすると思います。
また、この大きくなった五徳の効果によりイワタニのマルチプレートが使えるようになりました。これにより使用する際の安全性を向上させることが可能となりました。
黒舟で焼肉をしてみる
まず長方形のアルミ製グリル”黒舟”をのせた場合です。こんな感じに五徳の左右にグリルがはみ出します。
下の写真はその黒舟で焼肉をしたところ。黒舟には厚みがあり、そのぶん自重があるせいかズレたりすることなく、使っていても安定感があります。
軽量のフォールディングトースターはどうか
さきほどの黒舟とは逆に、プリムスのフォールディングトースターは軽量ですがどうでしょう?
こうしてみると五徳が大きいのでトースターの端から端までカバーできている様ですが。
下の写真はトースターでお餅を焼いているところですが、お餅を落とすことなく焼くことが出来ました。
餅がトースターの網にひっつくと危ないのですが、実際はトースターにはハンドルがあるので、片手でハンドルを持っておけば問題ないですね。
難しいのは小径コッヘル
僕が五徳の安定性を問題にしたとき、一番心配していたのは小さいサイズのコッヘルを使う場合でした。実はST-310では何度か小径のコッヘルをひっくり返したことがあります。
下の写真はエバニューのチロルコッヘルφ13cmで炊飯をしているところ。この13cmのコッヘルは容量が750mlなので、ちょうどソロキャンプで1合炊くのに良いサイズなんですよね。
ご存知のとおりアルミコッヘルの底面はつるつるしていて、五徳の上で滑りやすいのです。
結果、この使い方を現在まで何度もキャンプで繰り返していますが、今までひっくり返したことは皆無です。
現在はST-330でアヒージョも
下の写真はユニフレームの山フライパン深型17cmを使ってアヒージョを作っているところ。ST-310を使っていた頃は、このように直接五徳の上に熱い油の入った17cmの鍋なんて怖くてのせることが出来ませんでした。
だけど今ではST-330の五徳をすっかり信用して使っています。
ST-330の五徳のがたつきについて
僕が購入したST330は初期ロッドだったせいか、五徳のがたつきが結構ありました。ところが別件で一度修理に出したところ、五徳のがたつきが無くなって返ってきたのです。
このいきさつについては、次の記事をご参照ください。
ST-330はシングルバーナー最強だったか
今回は取り上げませんでしたが、ST-330はST-310と同様の寒さに強いマイクロレギュレーター機能も備えており、ほぼ万能なシングルバーナーに仕上がっています。
そんな非の打ちどころのないようなST-330フュージョンですが、マイナスポイントはもちろんあります。ここで隠さずマイナス面も書いておきます。
ST-330は設置面積が大きい
ただ使い勝手の面では一体式のST-310に比べ、曲がりにくい被膜ホースのせいで置き場面積が大きくなるというマイナス面があります。ST-310はホースが無い分だけテーブル上で設置面積をとりませんので、例えばソロキャンプ用の小さいテーブル上で使う場合であれば、ST-310の方が使い勝手がいいと感じるはずです。
実際にソロキャンプをされている方は小型テーブルを使うケースが多く、その場合には一体式のST-310の方が使いやすいと感じるかもしれません。
ST-330は価格が高い
また、もう一つのST-330の弱点は価格です。2倍まではいきませんが、ST-310とくらべてかなり高価な設定になっています。
ST-330とST310の価格比較
(本価格は、あくまで当記事作成時のAmazon調べです。)
というわけで最後の価格差については人によって感じ方が違うので別にするとして、シングルバーナーを購入する際にST-330を候補に考えられている方は、使用するテーブルサイズなども合わせてよくご検討されると良いと思います。
使用時のサイズがあまり気にならない場合、ST-330フュージョンは良い選択になるかもしれませんね。
それでは、今回のお話はこのへんで。
みなさん、楽しいキャンプを!